普段使いの漆器が揃う職人の心意気をまとった漆工町。

普段使いの漆器が揃う職人の心意気をまとった漆工町。

Nagano Kiso hirasawa
KISO NAGANO

江戸時代より栄えた漆工町・木曽平沢

長野県塩尻市。国産ワインの名醸地として近年注目を浴びるこの地に佇む集落が、江戸時代より栄えた漆工町・木曽平沢だ。正確には平成の大合併により木曽郡楢川村が消滅して現在の形になったのだが、隣り合う集落である奈良井とは町の空気がひと味もふた味も異なる。どちらもタイムスリップしたかのような江戸時代さながらの町並みが残る「重要伝統的建造物群保存地区」だが、観光地としても名を馳せる奈良井に対して木曽平沢に流れる空気感は、連綿と受け継がれてきた暮らしそのもの。「きっと250年前も同じように人々が暮らしていたのだろう……」と思わせてしまうのは、観光地化されることなく日常が淡々と紡がれてきたからかもしれない。

しかしながら隣もその隣も、さらにその向かいもと漆器店と工房が連なるこの町でさえ、伝統工芸においては御多分に洩れず、職人さんの後継者不足に喘いでいるという。職人さんの多くは70代で、若くとも30代が数人という現状。しかも、かつては問屋も多く分業制であった漆工業だが、職人さんの数が激減したこともあり、今はどこも製造から販売までを一貫して手がけているという。「販売に集中すると作業が滞るし、反対に作業ばかりしても売ることができなくなるので、そのあたりをサポートしていきたいですね。かつてのように問屋からの発注がない現在においては、職人さん自身にデザイン力や発信力といった新たなスキルも必要になってきています」と話すのは、塩尻・木曽地域地場産業振興センターの百瀬友彦さん。お客さんと触れ合う場所を「道の駅 木曽ならかわ」に創出することで職人さんのインスピレーションの場をつくろうと奮闘しているほか、tokirinoで販売する「ドアノブ×木曽漆器」のプロダクトに関しても、百瀬さんが職人さんに仕事が行き渡るように進めてくれている。

そもそも木曽漆器の特徴は何かといえば、その最大の魅力は“普段使いできること”である。美術品として目で愉しむ華美な漆塗りではなく、焼き物やガラス同様に毎日の食卓で使う日用品。木曽平沢に暮らす人々は今も昔も日々漆器を使用しており、その手軽さは私たちが普段使用している食器と何ら変わらない。「食洗機と乾燥機さえ避ければ問題ありません」と、木曽漆器を手に取れば「漆=非日常」といった概念はがらりと変わる。

「中山道沿いという場所柄、昔は江戸にも京都にも行商に行っていたんですよ。その際サンプル品として持っていったものが、座卓などのミニチュア家具。カタログ代わりに持参して、それを見せながら交渉をしていたわけです。そして仕事を取ってきたら、分業制なので皆に仕事を割り振るといった方法をとっていたんです」と、江戸時代の行商に関する面白いエピソードも。他にも街道沿いということで、櫛や弁当箱といったお土産品の販売など、昔からジャンルに囚われず自由に漆と親しんできたところもtokirinoとの相性のよさに通ずるのだ。この何でも手がけるところを木曽平沢の人々は「木曽漆器は特徴がないところが特徴」と言うが、その謙虚さというか商売っ気のない職人気質が、木曽平沢の町の魅力そのものだと感じる。なまじ観光客が押し寄せないところがツウ好みというべきかもしれない。

最後に訪れるのであれば是非とも宿泊していただきたい場所が、多機能型コミュニティー施設「日々別荘」である。1931(昭和6)年に建てられた和洋折衷の瀟洒な木造建築で、空き家として長年放置されていた建物を改修して営業しているのだが、その魅力はなんといっても木曽平沢の町中に位置すること。漆工町に宿泊する。そんな工芸好きにはたまらない体験をしてみてほしい。

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